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嗅覚障害

嗅覚障害とは?原因と背景

衣替えで出したセーターの臭いを嗅ぐ女性│嗅覚障害とは?原因と背景「においがしない」「においがわかりにくい」という症状は、食事の楽しみを奪うだけでなく、ガス漏れや焦げなどの危険を察知できないリスクにもつながります。そのため、嗅覚障害は 生活の質(QOL)を大きく下げる症状です。

嗅覚は、鼻の奥にある「嗅上皮(きゅうじょうひ)」でにおい分子をキャッチし、脳へ伝えることで成立します。この経路のどこかに障害が起こると、においを感じにくくなります。

ポイントは、風邪や鼻炎のあとに一時的に起こるケース と、数週間以上続く慢性的なケース を見分けること。数日で改善する軽度のものもあれば、コロナ後遺症・副鼻腔炎・頭部外傷・神経の障害など、多彩な原因で長引くこともあります。

嗅覚障害の主な原因

風邪や副鼻腔炎による嗅覚障害

いちばん身近なのは風邪や鼻炎、副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)によるものです。
鼻の奥が腫れて空気の通り道がふさがれると、においが嗅上皮に届かず「においがしにくい」状態になります。

  • 風邪のときに一時的ににおいがわからなくなるのはよくあることですが、通常は数日〜数週間で自然に回復します。
  • ただし、副鼻腔炎が慢性化したり、鼻ポリープができてしまうと、症状が長引き、治療を受けないと改善しにくくなります。

副鼻腔炎について

コロナ後遺症としての嗅覚障害

新型コロナ感染後には「においが全くしない」「においが変に感じられる」「味もしない」といった訴えが多く寄せられています。

  • 多くは数週間〜数か月で改善するが、半年以上続く例もある
  • 嗅覚トレーニング(においリハビリ) が有効とされ、研究も進んでいる

「嗅覚障害は治らないのでは?」と不安になる方も多い分野ですが、治療の選択肢は広がっています。

神経や中枢性の障害

においを感じる神経や、その情報を処理する脳に障害がある場合もあります。

  • 交通事故や転倒による頭部外傷で嗅神経が傷つくと回復が難しいことがある
  • パーキンソン病やアルツハイマー病など神経変性疾患の初期症状として現れることも

このタイプは自然に改善する可能性が低いため、数週間以上においが戻らない場合は耳鼻咽喉科で相談することが大切 です。

嗅覚障害は治らない?「治る嗅覚障害」と「治りにくい嗅覚障害」

嗅覚障害が長引くと「このまま一生においを感じられないのでは…」と不安になる方が少なくありません。実際には、原因によって 治りやすいタイプ治りにくいタイプ に分けられます。

治りやすいケース

  • 風邪やインフルエンザの後
  • アレルギー性鼻炎
  • 軽い副鼻腔炎(蓄膿症)

これらは鼻の粘膜や通り道が一時的に腫れているだけのことが多く、炎症が治まればにおいも戻ってくることが多いです。

治りにくいケース

  • 新型コロナ感染後の嗅覚障害(後遺症)
  • 頭部外傷や嗅神経の損傷
  • パーキンソン病・アルツハイマー病などの神経変性疾患
  • 加齢にともなう嗅覚の低下

これらは嗅覚の神経や中枢がダメージを受けているため、自然に完全回復するのは難しいことがあります。

改善の可能性と治療の工夫

「治りにくい」とされるケースでも、諦める必要はありません。

  • 嗅覚トレーニング(においリハビリ)
  • 副鼻腔炎の適切な治療
  • 生活習慣の改善(禁煙・睡眠・栄養)

こうした取り組みで改善がみられる例も多く報告されています。

自宅でできるセルフケアと改善の工夫

嗅覚障害のセルフケアや治し方として、次の方法が有効です。

鼻うがい・加湿で鼻の環境を整える

生理食塩水を使った鼻うがいや、加湿器で室内を乾燥させないことは、鼻粘膜を健やかに保つ基本です。

においトレーニング(嗅覚リハビリ)

レモン・ローズ・ユーカリ・コーヒーなど、異なる系統の香りを毎日数分かぐ方法です。
神経を刺激し、回復を促すリハビリとして世界的に研究・実践されています。

生活習慣の改善

禁煙、十分な睡眠、バランスの取れた食事は嗅覚の回復に欠かせません。とくにタバコは嗅覚に悪影響を及ぼすため控えましょう。

注意したいのは、「ネットで見た◯◯で治った」といった民間療法。再現性が乏しく、かえって悪化させる可能性もあるため注意が必要です。

耳鼻科で行う検査と治療

鼻内視鏡検査で嗅覚障害の原因を確認する医師のイメージ嗅覚障害が長引く場合や重度のときは、耳鼻咽喉科での診断・治療が不可欠です。

検査

  • 嗅覚検査(においを識別できるかを調べるテスト)
  • 鼻内視鏡検査(ポリープや炎症の有無を確認)

治療

  • ステロイド点鼻薬・内服:炎症を抑え嗅上皮の回復を助ける
  • 抗菌薬:副鼻腔炎など感染が原因の場合に使用
  • においリハビリ(嗅覚トレーニング):治療の中心となる再訓練法
  • 外科治療:鼻ポリープや慢性副鼻腔炎では手術で通気を改善することも

※手術に関しては連携医療機関にご紹介させていただきます。症状の原因に応じて、これらを組み合わせながら治療を進めていきます。

受診を検討すべきサイン

次のような場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。

  • 風邪が治っても 2週間以上においが戻らない
  • コロナ感染後、1か月以上改善がみられない
  • 片側の鼻だけにおいがしない
  • 頭を打ったあとから嗅覚がなくなった
  • 嗅覚障害に加えて 味覚の異常や全身症状 がある

長引く嗅覚障害は放置すると治療が難しくなることもあります。「様子を見よう」で先延ばしにせず、早めの受診が改善への近道です。