鼻茸(はなたけ)とは?
鼻茸(はなたけ)は、鼻の奥や副鼻腔にある粘膜が炎症によって腫れ、キノコのように垂れ下がってできる良性のポリープです。医学的には「鼻ポリープ」とも呼ばれます。がんのように命に関わるものではありませんが、放置すると徐々に大きくなり、鼻づまり・嗅覚障害・息苦しさなど日常生活に大きな影響を与えることがあります。
特に慢性副鼻腔炎(蓄膿症)と深く関わっており、3ヵ月以上症状が続く患者さんのうち約10~20%に鼻茸がみられるとされています。小さいうちは自覚症状が乏しいこともありますが、大きくなると鼻の通りを塞ぎ、睡眠の質や集中力の低下にもつながります。
鼻茸は片側だけにできる場合もありますが、慢性的な炎症が続くと両側に複数発生することもあります。
親指ほどの大きさに達するケースもあり、鼻の入り口から肉眼で確認できることもあります。
鼻茸ができる原因・できやすい人
鼻茸は、同じように副鼻腔炎を患っていてもできやすい人とできにくい人がいます。しかし、その差が生じる理由や、そもそも鼻茸ができる詳しいメカニズムについては、医学的にまだ完全には解明されていません。現時点で分かっているのは、以下のような要素が複雑に絡み合っているということです。
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
副鼻腔に膿や炎症が長くとどまる病態で、鼻茸の最も代表的な原因です。炎症が3ヵ月以上続くケースで特にリスクが高まります。
アレルギー性鼻炎
花粉症やハウスダストなどによるアレルギー反応が鼻粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、鼻茸形成の温床となります。
気管支喘息(特にアスピリン喘息)
NSAIDs(アスピリンや解熱鎮痛薬)で悪化するタイプの喘息は、鼻茸との合併率が高いことが知られています。
好酸球性副鼻腔炎・アレルギー性真菌性副鼻腔炎
特定の炎症細胞(好酸球)や真菌(カビ)が関与する特殊な副鼻腔炎では、多発性の鼻茸ができやすい傾向があります。
免疫異常や全身性疾患
囊胞性線維症(cystic fibrosis)など、体全体の粘液分泌や免疫に異常をきたす病気も鼻茸形成に関与します。
ポイント
鼻茸は単独で現れる病気ではなく、必ず何らかの炎症性疾患や免疫異常に付随して発生するのが特徴です。そのため、鼻茸を治療する際には「ただ切除する」だけでは不十分であり、背景にある副鼻腔炎やアレルギーのコントロールが極めて重要です。根本原因を治療しなければ、手術で取り除いても再発するリスクが高まります。
鼻茸の治し方
鼻茸(はなたけ)は、風邪のように放っておいて自然に消えるものではありません。炎症が続く限り縮小することはなく、必ず治療によって改善を図る必要があります。 そのため「いつか自然に治るだろう」と放置すると、鼻づまりや嗅覚障害が悪化し、生活の質を大きく損なうリスクがあります。
治療は、鼻茸の大きさ・症状の強さ・背景となる病気 に応じて段階的に選択されます。
薬物療法(保存的治療)
小さな鼻茸や軽症の場合は、薬によって炎症を抑え、鼻茸の縮小を目指します。
ステロイド点鼻薬
最も基本的な治療で、炎症を直接抑えることで鼻茸を徐々に小さくします。長期使用が可能ですが、医師の指導のもとで継続することが大切です。
ステロイド内服薬
症状が強い場合に短期間のみ使用します。点鼻薬より効果が早い一方、副作用のリスクがあるため慎重な管理が必要です。
抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬・ロイコトリエン受容体拮抗薬など)
アレルギー性鼻炎を伴う場合に有効で、炎症や鼻水の軽減に役立ちます。
抗菌薬(抗生物質)
副鼻腔炎による細菌感染が確認されたときに処方され、膿や炎症の改善をサポートします。
鼻洗浄・ネブライザー療法
生理食塩水による鼻うがいや薬剤吸入で鼻腔を清潔に保ち、治療薬の浸透を助けます。
手術療法
薬物療法で十分な改善が得られない場合、
または鼻茸が大きく鼻の通りをふさいでいる場合には、手術による除去が検討されます。
代表的な治療は、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)です。鼻の穴から細い内視鏡を挿入し、鼻茸や炎症を起こした粘膜を直接取り除く低侵襲な方法で、
術後の回復も比較的早いのが特徴です。当院では、必要に応じて耳鼻咽喉科専門病院と連携し、手術治療を実施しています。術後も再発予防のために、点鼻薬治療や生活習慣の改善を継続的にサポートいたします。
追加治療の選択肢
アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法など)
花粉症やダニアレルギーが強く関与している場合には、原因アレルゲンそのものに体を慣らす治療が有効なことがあります。
生物学的製剤(抗体医薬)
近年では、好酸球性副鼻腔炎に対して炎症に関わる分子をピンポイントで抑える注射薬も登場しており、薬物療法や手術で改善が乏しい難治例に期待されています。
鼻茸の検査・診断
鼻茸(はなたけ)が疑われる場合、耳鼻咽喉科での診察と検査によって診断が行われます。鼻茸は風邪やアレルギー性鼻炎による鼻づまりと区別がつきにくいため、専門的な検査が必須です。
問診と視診
まずは症状の経過や既往歴(副鼻腔炎・アレルギー・喘息の有無など)について詳しく問診します。続いて、前鼻鏡(鼻腔を広げる器具)を使って鼻の中を観察します。大きな鼻茸であれば、この段階で確認できることもあります。
鼻内内視鏡検査(ファイバースコープ)
鼻茸が小さい場合や奥にある場合は、細い内視鏡(ファイバースコープ)を用いて鼻腔内を詳細に観察します。これにより、鼻茸の有無・形状・位置を確認でき、炎症の程度や膿の存在なども評価できます。ただし、副鼻腔の内部までは直接見ることができません。
画像検査(CTスキャン)
より正確な診断や治療計画には、CT検査が行われます。副鼻腔の内部構造や炎症の広がり、鼻茸の大きさや分布を立体的に把握できるため、特に手術を検討する際には欠かせない検査です。X線よりも詳細に確認でき、再発リスクや手術の難易度を予測する材料にもなります。
鼻茸に関するよくある質問
鼻茸の初期症状は?
初期の鼻茸は小さいため自覚しにくいことが多いですが、鼻づまりが長引く・匂いがわかりにくい・鼻水がいつまでも続くといった症状が現れることがあります。花粉症や風邪と似ているため見過ごされやすい点に注意が必要です。
鼻茸は自然にとれるものなの?
鼻茸は自然に消えることはほとんどありません。炎症が続く限り縮小することはなく、むしろ大きくなって鼻の通りをふさいでしまうこともあります。治療には薬や手術といった医療介入が不可欠です。
鼻茸は自分でわかる?
大きな鼻茸は鼻の入り口から見えることもありますが、小さいものは肉眼で確認できません。自分で判断するのは難しいため、耳鼻科での内視鏡検査が必要です。
鼻茸かどうか確かめる方法は?
耳鼻咽喉科で行う鼻内内視鏡検査やCT検査で確定診断が可能です。自己判断では鼻炎や副鼻腔炎との区別がつかないため、鼻づまりが長く続く場合は専門医を受診しましょう。
鼻茸は癌化しますか?
鼻茸はあくまで良性のポリープであり、直接がんになることはありません。ただし、まれに腫瘍と区別がつきにくいケースもあるため、必要に応じて病理検査(生検)で確認することがあります。
鼻茸の手術は痛くないですか?
標準的な手術である内視鏡下副鼻腔手術(ESS)は、全身麻酔または局所麻酔で行うため、手術中に痛みを感じることはありません。術後は多少の不快感や違和感が残ることがありますが、多くの場合は数日で落ち着きます。