難聴

難聴とは、耳から入った音が正しく脳まで届かず、聞き取りにくくなる状態をいいます。単なる「音量が小さく聞こえる」だけでなく、音が歪んだり、会話の一部が欠けたりすることもあります。 この聞こえのトラブルは、生活全般にさまざまな影響を与えます。
日常生活への具体的な影響
危険の察知能力が下がる
車や自転車の接近音、アラーム音などを聞き逃す可能性が高まり、事故やケガのリスクが増えます。
コミュニケーションの摩擦が増える
会話の聞き返しが増え、家族や同僚とのやり取りがスムーズでなくなります。結果として、会話を避けるようになり、孤独感が強まることもあります。
心理的ストレスと自信低下
「聞こえない自分」がコンプレックスとなり、人前で話すのをためらったり、外出が減ったりします。
認知症リスクの上昇
聞こえにくさは脳への刺激を減らし、思考力や記憶力の低下に影響することが近年の研究で明らかになっています。特に高齢者では、認知症の予防の観点からも早期対策が推奨されます。
難聴の種類と原因
私たちが音を聞くためには、外耳 → 中耳 → 内耳 → 蝸牛神経 → 大脳という複雑な経路が正しく働く必要があります。
どこか一つでも障害があると、音は正しく脳に伝わらず「聞こえにくい」という状態になります。
耳鼻咽喉科で難聴の治療を行う際は、まずどの部位に原因があるかを特定する検査(純音聴力検査、鼓膜の動きの測定、MRIなど)を行い、それに応じた治療法を選択します。
難聴は、障害がある部位によって大きく次の3種類に分類されます。
伝音難聴(でんおんなんちょう)
原因部位:外耳・中耳
音は空気の振動として外耳から鼓膜、中耳の耳小骨を通り、内耳へと伝わります。この過程に問題があると、音の大きさが減衰し、聞こえが悪くなります。
代表的な原因
- 外耳道炎、耳垢栓塞
- 急性・慢性中耳炎
- 鼓膜穿孔(鼓膜に穴があく)
- 耳硬化症、耳小骨の異常
- 外傷(骨折や異物)
- 耳管開放症
治療法
薬物療法や手術で改善するケースが多く、補聴器の使用も有効です。
感音難聴(かんおんなんちょう)
原因部位:内耳・蝸牛神経・脳
音の振動は内耳で電気信号に変換され、神経を通じて脳へ届きます。この過程に障害があると、音が歪んで聞こえたり、言葉が聞き取りづらくなります。
代表的な原因
- 突発性難聴
- 騒音性難聴(長期的な大音量曝露)
- 加齢性難聴(老人性難聴)
- 先天性難聴
- 内耳のウイルス感染や血流障害
- メニエール病
- 低音障害型感音難聴
治療法
突発性難聴ではステロイド薬の投与が有効とされ、発症から早期に治療を開始することが重要です。
進行した場合は補聴器や人工内耳手術が選択肢となります。
混合性難聴
伝音難聴と感音難聴が同時に存在する状態です。
例えば中耳炎の既往がある高齢者が加齢性難聴を発症するなど、複数の要因が重なって起こります。
治療は両方の要因に対応する必要があり、耳鼻科での精密検査と適切な補聴器調整が重要です。
突発性難聴について
突発性難聴は、ある日突然、片耳の聞こえが急激に悪くなる病気です。めまいや耳鳴りを伴うこともあります。原因は完全には解明されていませんが、ウイルス感染や内耳の血流障害が関与していると考えられています。
主な症状
- 片耳が詰まったような感覚
- 急激な聞こえの低下(数時間〜数日で進行)
- 耳鳴り
- めまい(伴うことがある)
治療と予後
突発性難聴は時間との勝負といわれており、発症から48時間以内に耳鼻咽喉科を受診することが推奨されます。治療はステロイド薬の点滴や内服、血流改善薬などを組み合わせて行います。早期治療により、多くの方は聴力が改善しますが、治療開始が遅れると後遺症として難聴が残る可能性が高まります。
難聴に関するよくある質問
難聴と突発性難聴の違いは?
難聴は「聞こえが悪い状態」の総称で、原因や発症時期はさまざまです。
一方、突発性難聴は「ある日突然、片耳の聴力が急激に低下する」病気です。数時間〜数日で症状が進行し、耳鳴りやめまいを伴うこともあります。
突発性難聴は早期治療が予後を大きく左右するため、聞こえの急な変化に気づいたら48時間以内に耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
突発性難聴の初期症状は?
代表的な初期症状は以下の通りです。
- 片耳の聞こえが急に悪くなる
- 耳が詰まった感じがする
- 耳鳴りが強くなる
- めまい・ふらつきを伴うことがある
風邪や疲れと勘違いして放置されることもありますが、時間が経つと聴力が回復しにくくなるため、早めの診断と治療が重要です。
難聴は治りますか?
原因によります。
- 伝音難聴(中耳炎、耳垢、鼓膜穿孔など)が原因の場合、治療や手術で改善することが多いです。
- 感音難聴(加齢性難聴、騒音性難聴など)は回復が難しいことが多く、補聴器や人工内耳が治療の中心となります。
耳鼻科で適切な検査を受けることで、回復が見込めるかどうかを判断できます。
イヤホンによる難聴は回復しますか?
長時間・大音量でイヤホンを使用すると、騒音性難聴(音響外傷)になる可能性があります。
早期であれば一時的な聴力低下で済む場合もありますが、慢性的に続けると不可逆的(元に戻らない)な難聴になることもあります。
イヤホンを使う際は、
- 60分以内の使用
- 音量は最大の60%以下
を目安に耳を守りましょう。
ストレスで難聴になることはありますか?
はい、ストレスは難聴の一因となることがあります。
特に突発性難聴では、強い精神的・肉体的ストレスが発症の引き金になることが報告されています。
また、ストレスで耳鳴りが悪化したり、聞こえづらさを強く感じるケースもあります。
十分な睡眠・休養、適度な運動、ストレスマネジメントが耳の健康にも大切です。